β キャピタリスト年頭所感 2024

新年あけましておめでとうございます。
社内ではすっかり恒例になってきました、年頭所感でございます。

2023年も九州スタートアップエコシステム及び弊社に関わっていただいた皆様、ありがとうございました。

例年にも増して、社内では抽象的な事象を思考したり議論したりする時間が多かった1年でした。2024年はその議論の内容などを世の中に発信していくこともあるかと思いますので、引き続き当メディア、βラボもよろしくお願いいたします。

さて、今年も弊社4名のキャピタリストが、2023年の総括と2024年の抱負を語る「キャピタリスト年頭所感」をお届けいたします。なお、順番は提出順です。

林 龍平のキャピタリスト道

2023年は、これを言語化する作業からスタートしました。次のファンドを構想するタイミングも近づいてきて、僕たちが地域に根ざしたスタートアップ支援を行うなかで何を実現したいか、どんな貢献ができるのかを紡ぎ合わせ、過去を振り返りながら未来を描く作業です。投資哲学、というとちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、まさに去年のお正月はこんなことをずっと考えていました。

2023年2月、ちょうどWBCの強化合宿が開催されていた時期の宮崎オフィスに全メンバーが集まり、それぞれのキャピタリスト道やそこから導き出される投資哲学について語り合いました。これは、今後のβの活動につながるとてもいい時間でした。ファンドレイズの準備活動や、新メンバーの採用活動など、2023年の行動の起点になったんじゃないかと思います。メンバー各自がそれぞれのスタートアップ観で投資に向き合っていて、それらは少しずつ異なってはいるものの、根底に共通する部分がかなりある、というあたりなど、ファンドコンセプトやGPとしてのパーパスに直結する気づきがたくさんありました。

また、これ以降、「文化」に貢献するというあたりを意識するようになりました。僕たちが最初のファンドを立ち上げた2006年、起業家やスタートアップに対する世間の理解度はまだまだ低く、ベンチャー企業という言葉にも一種の怪しげなニュアンスがあった時代ではなかったかなと思います。SNSやスマートフォンの発明など、世界を変える起業家の出現によって、その風潮が少しずつ変化してきました。個人的には、Facebookの起業家マーク・ザッカーバーグをとりあげた映画「ソーシャル・ネットワーク(2010)」あたりがその分岐点だったんじゃないかなと思っています。その後、僕たちの住む九州にもその影響が伝播し、スタートアップエコシステムの原型のようなものが形成されてきました。この根本的な背景として、スタートアップへの理解や、多様なチャレンジへの許容が進んできたことがあるように実感しています。

これからも、テクノロジーの発達やトレンドの変化はますます速度を増すと思いますし、僕たちが展開しているベンチャーキャピタルのビジネスモデルも、それに伴って少しずつ変わっていくことも予想されます。ただ、その根底にある、相互理解や許容によって新しいものを共創する、といった文化が地域に根ざしていくことで、地域が繁栄し続けられるような、そういう世界づくりに貢献できたらと改めて思いました。

2023年の投資活動を振り返る

昨年も多くの起業家の皆さんとの出会いがあり、結果的に3社のスタートアップへの新規投資を実行しました。とある先輩キャピタリストの「誰も知らない、いい会社に投資をする」のがベンチャー投資の本質のひとつである、という言葉は僕のキャピタリスト道を構成する大きな要素になっていて、またスタートアップエコシステムを文化として伝播させていく、という視点でも、沖縄からIPOモデルの成功事例にチャレンジするROSや、女性シリアルアントレプレナーの河さん率いるthestoryに投資ができたことには大きな意味があるんじゃないかと思っています。

https://dogan.vc/lab/1164

DX啓発期がAIという武器を手にして加速

また、たった1年でAIがここまで日常に溶け込んできたことも見逃せません。昨年の年頭所感で、「2023年はDXの啓発期になる」と書いたのですが、僕の予想を大きく上回って一気にハイプ・サイクルの「生産性の安定期」に達したのではないかと感じています。

その背景には、AIが急速に身近な存在になった、ということが挙げられると思います。

一つ事例を挙げますと、昨年僕が投資を行ったFindは、「落とし物DX」を掲げて、AIによって落とし物が見つかりやすい世界を作ることをミッションに掲げています。昨年冬、代表の高島さんと出会い、彼と一緒にJR九州に導入提案に行ったのですが、それからわずか半年余りでJR九州での本番運用が開始、全線の落とし物対応をAIが支援するようになりました。

お忘れ物について | 駅・きっぷ・列車予約 | JR九州

このように、九州の落とし物をAIが探してくれるという、1年前には全く想像できていなかった世界線をみることになりました。こういった事例は地方でこそ生まれるものではないかと思います。「地方の課題は将来の日本の課題」とはよく言われますが、生産性を高めていかなければ経済活動の維持そのものが難しくなるかも、、という危機感は、新しい解決手段へのチャレンジの原動力にもなると思います。

2024年辰年、僕は48歳となり干支の5巡目が始まるという年です。48年間九州に住まい続けた身だからこそ感じるこの課題感・使命感をエネルギーに転換して、新しい発想を尊重して多様な挑戦や失敗を受け入れる文化を深く根付かせていきたいと思います。

 

2023年の振り返り

毎年年末になるとこの年頭所感を書くんですけれども。去年の今頃これを書いていたときに、来年はもっといいことを書きたいなとかそんなことを思っていましたが、今年も大したこと書けなさそうで情けないです。

ですがせっかくなので今年も色々と書いていこうと思います。

入りが暗いので、よかった部分の振り返りから。ジョインしてから早くも3年目を迎え、ありがたいことに色んなイベントに呼んでもらうことが増えました。人前で話す機会をいただいたり、ビジコンの審査員として招待いただくことが多かった1年でしたね。特に、学生関連のイベントや教育機関の授業などが多く、彼ら彼女らにとってスタートアップとの出会いが僕だったというシーンも多くあったんじゃないかと思います。僕自身大学を出てまだ数年しか経っていないこともあり、そういう人間と接することで、スタートアップを身近なものだと感じてもらえていれば嬉しいです。

地方の若者に対しあらゆる選択肢を提示していくことは、VCで活動する中でやっていきたいことの1つであり、そのステップの最序盤においては多少貢献できた1年だったなと振り返っています。大学や学生関連での活動はこれからも続けていきたいと思っていますので、関係者の方々におきましては、気軽に相談・依頼をいただければと思っています。

また、九州の起業家志望の若者同士を繋げたり、ちょっとした先輩と話す機会をつくったりというようなことも1年間結構やってきました。4、5年前僕がスタートアップと出会った時は、周りに同年代が多くいて、形としてコミュニティがあったわけじゃないけど、ちょっと意識したりするようななんかそういう雰囲気がありました(少なくとも僕はそう感じていた)。人と人をつなげるのはそんなに得意ではないですが、中心にVCがいる状態ではなく、だけどお互い勇気を与え合えるような人の集まりを作りたいです。

そして来年はもう少し進んだ一手、例えばインターンの選択肢をより分かりやすいものにしていったりだとか、九州各県と福岡・東京との橋渡しをしたりだとか、そういったものにチャレンジをしていきたいと考えています。

投資活動に関して

2022年にシード期の企業に何社か投資をさせていただいていたので、今年は各社が資金調達に動く1年でした。いわゆるプレシリーズAというようなラウンド感での資金調達であり、投資担当として色々と動いておりました。一連の中で、自分ではいいと思っているものの良さが伝わらないもどかしさを感じましたし、間違いなくこの1年で力が及ばないことを一番反省したのはこの資金調達面についてです。

一方投資先のいいファイナンスも経験できましたが、数字が出ている投資先は逆に支援がそこまで必要ではないことも感じまして。グロース市場のIPOを見ていても、半分くらいはVCバックの企業ではないですし、改めて株主としてのVCとしての意義について考えさせられます。

2023年は既存投資先への追加投資を2社に対して実行させてもらった一方、新規投資は行わない1年となりました。九州にこだわってやりたいという思いがあったのが1つと、やっぱり投資後の支援における自信のなさというのがあったんじゃないかと思っています。ですが投資先の起業家の皆さんから多くの学びをいただいたので、これを次に活かせていけるような感覚はあります。

2024年の抱負

振り返ると2023年は社会で多くの出来事があり、まさに激動の1年でした。パリのデモから始まり、GPT関連のニュースが世間を騒がせ、東欧や中東は依然不安定で。ビリージョエルが今年だけで1曲つくれそうです。今年もきっと色んなことがあるんだろうと予感させますが、いい1年になるといいな。

数年後、あの頃の赤瀬はいいことしていたよね~って言われるように頑張ります。

23年の後半から、守りに入りすぎという言葉が脳裏に常に引っかかっています。いいリスクをとって攻めの投資をやっていく1年にしたいですね。

優勝するぞ~!

 

2023年の投資と出張の履歴、あるいは終電新幹線への感謝

新規投資が3件、追加投資が2件でした。
改めてこれまでの活動を振り返る機会の多い1年だったのですが、やはりエコシステムというのは多くの人の参加によって成り立っているんだなと実感する毎日です。皆さまいつもありがとうございます。

2021年に掲げた「福岡市以外の九州に出ていく」という目標に対して、昨年はようやく1社に投資をさせて頂くことになりました。未公表ですが、南九州の会社です。日常のなかで接する機会の少ない他都市の人と信頼関係を結んでいくということの難しさを感じ、だからこそ、その地に根ざす人達との関わりというのはとても有難い機会だなと。

2023年は調達環境の変化が大きい年でした

簡単に振り返ってみると、今年はメインの活動エリアでは、山口 1回、北九州(市) 4回、佐賀 3回、長崎 1回、熊本 3回、大分 2回、宮崎 2回、鹿児島 5回、沖縄 0回と現地にお邪魔していたようです。佐賀・大分には車で行くことも多く、北九州・熊本・鹿児島は新幹線の終電で帰ってくるような日程もあって、結構行けるな、と思い始めています。それ以外ですと、東京は10回と思ったより行っていたのと、第3の故郷・神戸には母校に呼んでもらう形で3回、名古屋、広島、それと出雲にはそれぞれ1回ずつお邪魔しました。

出雲といえば、これはCOTENへの追加投資についてのPodcastを収録しに行くという結構突発的な予定だったのですが、色々な方に言及頂くような投資機会に関われたことを嬉しく思う反面、非常に身が引き締まる思いをした経験でした。(余談ですが、出雲まで行って収録したやつが実はお蔵入りになり、福岡に戻ってきてから再収録されたのが現在公開されているバージョンです。出雲大社に詣でることができたのと、他にも素敵な出会いがいくつかあったので全然良いんです。良いんですよ。)

深井さんも言及されてましたが、起業家という貴重なリソースのアロケーションをより最適化していくために、金融のできる仕事はまだまだあるなと思います。

■ 【勝手に舞台裏】COTENへの出資から、いま思うこと
https://spotifyanchor-web.app.link/e/bny7u0APAFb

また、唯一投資が公表されているのが「人流の創出で、地域経済/地方経済を活性化する」というミッションを掲げるジオフラです。プラリーというアプリがなんとキャナルシティと連動した実証実験も行っているので是非DLしてみてください。個人的なテーマとしては、「観光」というよりも「域外から顧客がやってくる」という分野で何度か投資でチャレンジさせてもらっているのですが、ポイントアプリという新しい軸での挑戦を支援できることとなりました。楽しみです。

今年の活動方針 ──漫画家から学ぶナラティブ構築の思考法

本年も、改めて九州各地を行脚していくという活動をベースにその土地でチャレンジをしている起業家と戦略について語り合う時間を作っていきたいと思います。

LLMの革新によって、第何次かのAIブームからノーコードまでの流れが一気に統合されてきた感覚を得た昨年でしたが、それが社会にどう受容されていくのか、というのが目下の関心事でもあります。地方に住んでいるとより生活者との距離が近く、また生活していくという行為の大切さを感じることが多いので、LLMを起点とした技術革新が、如何にして人々の生活をより良くしていくか、そういったテーマで事業に取り組んでいく方々がこの地からも生まれてくると良いなと。

その一方で、「より良い生活」というのは明確な課題解決というイシューが事業の出発点にならないことも多く、「より良さ」という難しい命題を日々考える中でしか事業が生まれない気もしています。そういった時には、演繹法的な事業の起ち上げではなく、より帰納法的な、出会いたい未来から逆算していく思考法が有益だと感じることが多くなりました。

■ 帰納法と演繹法
https://sizu.me/teliot/posts/h4o85exf6ads

様々な起業家の方がいらっしゃるのでどちらが良いとかどちらが向いてるとかは、まぁ難しい話なのですが、なんとなくそんなことを考えながら投資検討に向き合っていきたいです。

また、今年は介護報酬の改定においてロボットやセンサーなどのデジタル技術を活用する施設に対して報酬の加算を行うという、いわゆるケアテックの介護保険収載が見込まれるという非常に重要な節目となりそうで、いよいよ介護領域も事業として伸びていくフェーズに入ってきたことを感じる年となりそうなことも楽しみです。

「健康寿命」という言葉が注目されるようになって10年ほど経ち、様々な取り組みによってこれは伸びてきているようなのですが、実際は「平均寿命」の伸びには足りず、結果として「健康ではない余命」というのは年々伸びているということを感じています。ヘルスケア領域はいくつか投資を行ってきましたが、今後はより「健康ではない余命」期間を短くするような技術やアイディアに投資を行っていきたいです。

抱負的な

2024年は私達にとってチャレンジの年となりそうだと感じています。

社会が劇的に変化しているなかでは本当に小さな変化かもしれませんが、私達がエコシステムの当事者としてできることは何でもやっていきたいし、エコシステム間を越境することで、更に豊かな環境となる手助けができれば良いなと思います。

2023年は色々と考えることが多かった1年でしたが、それを踏まえて活動を行う年にしていければなと。

引き続き、投資先の起業家とやっているPodcastや、思いついた時に更新をする個人ブログとか、思索を深めて思考を垂れ流すようなことも続けていきますので色々なところでまた議論をさせて下さい。

もちろん、投資についても積極的に検討をして参る所存ですので、ぜひぜひ本年もご愛顧のほど何卒宜しくお願い致します。

頑張ろう!

 

2023年を振り返って

2023年は年始早々からコロナに感染し、正月をベッドの中で過ごすという最悪のスタートとなりました。また、本厄の年ということもあって、スピリチュアル的な不安を抱えながらも、多くの起業家との出会いがあり、弊社メンバーや投資先の起業家の皆さま、LPの皆さま、その他多くの関係者に支えられた1年となりました。ありがとうございました。

そんな2023年でしたが、新規投資1件、追加投資1件を実行させていただきました。

新規投資では、美容業界向けのカスタマーサクセスツール「CyCal(サイカル)」の開発・販売を行う株式会社CyCalに投資をさせていただきました。当社は鹿児島市に本社を置くスタートアップで、これまで投資が実現出来なかった地域での投資が実行できたという意味でも非常に嬉しい案件の一つとなりました。

追加投資では、昨年投資をさせていただいたスポーツテックスタートアップの株式会社NineEdgeに追加投資をさせていただきました。当社が開発する動作解析アプリ「ForceSense」のベータ版をローンチ以降、良質な仮説検証とトラクションが得られたことでの追加投資の決定となりました。

新規で投資機会をいただきましたCyCalの西さんには感謝するとともに、CyCalを通じて創りたい未来に向けて、運命共同体として共に頑張りましょう!

NineEdge渡辺さんについては、引続きよろしくお願いします!

2023年の南九州(宮崎・鹿児島)

昨年の年頭所感にも書かせていただきましたが、九州各県で自治体や金融機関主導によるスタートアップ支援の熱が高まる中、宮崎県は一歩出遅れていましたが、ようやくスタートアップ支援事業がスタートしました。

また、鹿児島県は昨年に引続き、スタートアップ支援事業の方を継続しており、昨年度の採択企業がVCから資金調達を実現するなど、少しずつ見える形での実績がでてきております。

スタートアップ支援を始めたからと言って、すぐすぐ結果がでるものではありませんし、なかなか結果が出なくても継続することが大事です。各県の事業が一過性のトレンドによるものでなく、継続した支援となることを切に願っております…また、その熱が冷めないよう、宮崎県在住キャピタリストとして特に南九州においては、全力コミットしていきたいと思います。

2023年の南九州のスタートアップの動向

宮崎県内のスタートアップでは弊社投資先のテラスマイルが、鹿児島県内ではAMIが、また、投資先ではないスタートアップが宮崎では2社、鹿児島では1社が億を超える資金調達が実現しました(津野調べ)。5社が2023年に調達した額は約28億円にもなります(各社プレスリリースより計算)。

資金調達がゴールではありませんが、様々な投資家から評価をされて資金調達が出来たという点では喜ばしいニュースですし、2024年も九州内で多くのニュースが見れるようになるといいですし、今後の彼等の動向には注目です。

一方で、創業期の資本政策での失敗が散見されました。エクイティファイナンスに馴染みのなかった地方においては根深い闇というと語弊があるかもしれませんが、スタートアップ文化の醸造においては確実に解決しなければいけない課題です。投資家側のファイナンスリテラシーは勿論必要ですが、やはり起業家側がもう少しエクイティファイナンスの基礎的な部分を知る必要があるなと実感してます。そういった不幸を未然に防ぐためにも、2024年もファイナンスに関する啓蒙活動は続けていきます。

2024年の抱負

2024年は、個人的な重点エリアである宮崎・鹿児島での前述したような啓蒙活動を継続することは勿論ですが、まずは自身が担当している投資先に対して満遍なく支援ができるよう努めたいです。

ソーシングや投資の観点で申し上げると、2023年はイベントの参加など、自ら足を運んでソーシングする機会が少なかったと反省してます。だからこそ、原点に戻り、自分の足で起業家との出会いを創るということを意識したいなと。

2024年は後厄の年で、長かった3年間の厄年も終わります。そんな1年だからこそ、再度身を引き締め、「2024年は充実した素晴らしい年だった」と振り返れるそんな1年にしたいなと思います。

投資先の皆さま、これから出会う起業家の皆様、LPの皆様、そしてドーガン・ベータのみなさん、2024年もどうぞよろしくお願いいたします!!!

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